三里浜砂丘地の歴史

学び

白砂青松の三里浜は、松林に囲まれた美しい丘陵地帯でした。その中で、開墾された砂丘地の圃場は、夏季には灼熱した砂漠のような砂地での営農活動であり、この厳しい環境では「らっきょう」と「西瓜」が主な農産物でした。集落に近い圃場では、梅、桃、葡萄等も栽培されていました。当時の農家は畑作が主で、稲作は少ない状況でした。

1970年代

この三里浜砂丘地帯は、1970年代に福井新港と臨海工業地帯が整備されることになり、耕作していた農地は臨海工業地帯とグリーンベルト(緩衝緑地帯)で隔てられて、半減しました。残存した農地は、生業対策として土地改良が行われることになりました。砂丘地の起伏のある農地を平に整地し、区画を整理し、農道を整備し、そして旱魃(かんばつ)を克服するために灌水設備が整備されました。更に、砂丘地の防砂対策として圃場の周辺に松の木が植林されました。

この様にして残った土地は、立派な圃場に生まれ変わり、特産のらっきょう、西瓜の他、大根等が盛んに栽培されて、砂丘地のブランドとして出荷されてきました。(下図参照)

土地改良前(海岸側は松林が多く繁る。)
土地改良後(圃場は工業団地とグリーンベルト(緩衝緑地帯)で分離され半減)
土地改良の様子
土地改良後のラッキョウ畑
土地改良後の大根の出荷作業

1990年代

営農者の高齢化と若者の農業離れ等によって不耕作による休耕地が徐々に増加し、併せて松くい虫で松の木が殆ど枯れてきたために、強風による砂が堆積して圃場の荒廃が進んできました。圃場は砂地で耕作が容易であり、灌水設備が整備されて園芸に適している状況から、防砂対策を兼ねた三里浜砂丘地の再生が喫緊の課題でした。

不耕作による休耕地
松枯れの様子
強風による砂の飛散

2017年

三里浜砂丘地の産地再生を行うため、生産者・JA・行政等で連携して農産物の生産実態に関する現状分析や生産体制の整備、販路拡大の取り組みを行う『三里浜砂丘地園芸産地振興協議会』が設立されました。ミディトマトや小かぶなどの既存品目の生産・ブランド化の推進だけでなく、新たな地域ブランド品を産出するために、水はけが良い土壌を好み、防砂対策・休耕地の解消・景観の改善の効果が期待でき、美容・健康で注目されている『オリーブ』に着目し、地方創生推進事業の交付金を活用して試験的に250本の植樹を行いました。

2018年

試験的に植樹したオリーブ250本は、2017年秋の台風・冬の大雪を乗り越えて良好な成長が確認できました。そして、7月に有志が集まり、『三里浜オリーブ生産組合』を設立し、750本の植樹を行いました。